聴かせて、天辺の青



まだ彼が眠っていること、仕事から帰ってきてから掃除をすることを話したら、おばちゃんは笑って頷いてくれた。


「今は寝れるだけ寝たらいい、それだけ体が眠りを求めている証拠。そっとしておきましょうよ」


おばちゃんの笑顔は温かい。
さらに優しい。


昨日の朝に会ったばかりの見ず知らずの男性に対して、警戒することもなく受け入れられるなんて。親切に看病までしてあげるなんて。
私にはできない。


彼の今後のことには触れなかったけど、どうするつもりなんだろう。昨日おばちゃんに聞いた話では、『一晩だけ泊まる』と言っていたけど。


熱は下がったとはいえ病み上がりの体で、すぐに出て行くのだろうか。


もしかすると、もう一晩泊まると言い出すのかもしれない。彼は『当分帰るつもりはない』とも言ってたし。


ここに居着かれたとしても、迷惑なんだけど。


あんな言い方をしていた彼だから、目が覚めて真っ先に私に文句を言う可能性もある。


『自分が熱を出したのは、アンタのせいだ。アンタが海に突き落としたからだ』などと言い出す可能性大だ。


できれば私が帰ってくるまでに元気になって、さっさと何処かへ出て行ってくれてたらいい。