部屋を出るのと同時に、隣りの部屋の扉が開いて和田さんと鉢合わせた。
予想してたから驚きはしなかったけど、和田さんは私を見るなり、「うわっ」と声を上げて後ずさる。まるで演技かと思うほどの大袈裟な反応。
そりゃあ無理もない。
明るくなったとはいえ、和田さんは廊下には誰も居ないと思い込んで部屋を出たのだろうから。
しかも朝食前、こんなところに私が居るなんて予想しなかったはず。今までにも居たことはなかったし。
「どないしたんや? なんで、こんなところに居るんや?」
目を丸くして胸を押さえながら、大きく息を吐く。
そんなに驚いたのだろうか、和田さんって意外と怖がりなのかもしれない。
「驚き過ぎだよ、まさか、お化けか何かだと思ったの?」
と訊ねると、和田さんはにやりと笑った。何か良からぬことを言うつもりだ。
「なんや、全然怖いことないお化けやなあ、子供の悪戯か?」
「ホントは怖かったんでしょう?」
「アホ言うな、この世で一番怖いモンは人間じゃ!」
つい声高になって笑い出したから、慌てて口に指を当てた。和田さんはすぐに察して、肩を竦める。
「何かあったんか?」と声を顰めて。

