またもや私は、抜き足差し足で彼の部屋へと向かっている。
熱を出したのは、私のせい?
階段を上りながら、何度も胸に問い掛ける。認めたくないけど、認めざるをえない。
もやもやした気持ちはまだ消えず、部屋に近づくにつれて疼き始める。
元々、彼の体調が悪かったのかもしれない。もしそうだったとしても、海に落ちて濡れたことが追い打ちをかけてしまったのには違いない。
でも、彼のあんな言い方を思い出すと腹立たしさが蘇る。
罪悪感や自己嫌悪、いろんな気持ちが入り混じって胸がぞわぞわする。気持ち悪くなりそう。
部屋の扉の前で、何度も深呼吸した。
開いた扉の隙間から射し込む廊下の照明の灯りの先に、盛り上がった布団が見える。暗がりに手を伸ばしてスイッチを押すと、真っ白な照明が部屋を照らし出した。
荒くて苦しそうだった息遣いも落ち着いて、穏やかな寝息が漏れている。布団から覗いた顔は昨日よりも明るく、回復しているようだ。
おでこに貼られた冷却ジェルシートの端っこが反り返っているのは、一晩かけて熱を吸収した結果だろう。見るからに硬そうで、一気に剥がしてしまいたくなる。
ほっとして肩の力が抜けた。
彼はあまりにもよく眠っているから、声を掛けるのが申し訳ないほど。
朝食のことは聞かないでおこう。もちろん掃除も、夕方に帰ってきてからにしよう。

