聴かせて、天辺の青


『大切な人へ……』



真っ白になった画面の真ん中に、濃い青色の文字が浮かび上がった。手で書いたような少し丸みを帯びた小さな文字。彼の書いた文字だろうかと考えているうちに、文字は白に溶かされて消えていく。



再び真っ白に染まった画面の向こうから、微かなピアノの音が聴こえてきた。



ひとつひとつ確かめるように弾き出された音色が、ゆっくりとメロディを紡ぎ出す。柔らかなうねりの中、やがて大きくなっていくメロディとともに白い画面に濃い青色の文字が浮かび上がった。



『君と見た群青色』



青色の文字が滲んで、白い画面に染み込んでいく。白色に飲み込まれるのかと思ったら、逆に青色が白色を塗り潰していく。



画面が濃い青色に染まったのと同時に、歌声が聴こえてきた。



しっとりと深みのある彼の声。
胸の奥から熱がこみ上げてくる。



濃い青色の向こうに、いつか彼の姿が現れるんじゃないかと目を凝らし続けるけれど画面は何も映さない。ぼんやりと視界の青が揺れたことに気づくよりも早く、涙が溢れ出した。



「瑞香? 大丈夫?」

「うん、ごめん、大丈夫」



麻美が心配そうな顔で覗き込む。
懸命に笑顔を作ろうとするけれど、拭っても拭っても波は止まらない。