私は引き寄せられるように自転車を停めた。
釣りをしている訳でもないのに、こんな時間に堤防の上に人がいるなんて不自然だ。
少なくとも、地元の人間ではないことは確かだ。
だとしたら……
ぽつんと胸の中に浮かび上がってきたのは、極めて嫌な予感。胸がざわめき始める。
私はゆっくりと、堤防の先へと向かった。
やめてよ、こんなところで……
と祈りながら。
気づかれないように足音を殺して、慎重に歩み寄っていく。
私に気付いたら、急に声を掛けたら、驚いて何をするか分からない。
第一、そんな気を起してもらっては困る。
近付くにつれて高鳴る鼓動は、堤防の先まで聴こえてしまうのではないかと思うほど。
息苦しささえ感じる気持ちを落ち着かせようとするけど、逆に胸を締め付ける。

