「葛原さんは、海棠さんに帰って来てほしいんだよ」
浮かんだ予感を吐き出した。
彼から聞くよりもいっそ自分で言ってしまった方が、すっきりするかもしれないと思ったから。
それなのに。
バカだな、言ってしまってから後悔しても遅いのに。
すっきりなんてするはずなかった。それどころか余計に胸が苦しくなってきて、耳を塞いで逃げ出したくなるほど。
「いや……葛原さんが体調を崩して入院してるらしい、しばらく退院できそうにないって彼女は知らせに来たんだ」
力無い声には、彼の苦悩がはっきりと感じ取れる。
里緒さんが伝えたかったことは、彼にとって苦しくて辛いことだったんだ。どうやって探したのかはわからないけれど、こんな所まで会いに来たということに余計な想像をかき立てられる。
葛原さんの病状はあまり良くないのかもしれない。
だからこそ、彼は悩んでいるのだろう。本心は帰りたいんだと思う。すぐにでも葛原さんに会いに帰りたいはず。
かつてのメンバーに会うことに対する恐れや嫌悪もあるかもしれないけど、それ以上に引き止めているのは、きっと私の存在。
「葛原さんに会いに戻ってよ、こんな所まで里緒さんが知らせに来てくれたんだから……、葛原さんも海棠さんに会いたがっているはずだよ」
だったら私が、彼の背中を押そう。

