聴かせて、天辺の青


「うん、ちょっと深刻かもしれない、河村さんの旦那さんの浮気相手みたいだから……」



できるだけ声を殺して告げると、海棠さんは黙って頷きながら店の外へと視線を向ける。
そこに海斗の姿は見えない。
きっと、ここからは見えない自販機コーナーの掃除をしているのだろう。見えなくても河村さんのことを気にかけて、落ち着かない海斗の顔が浮かんでしまう。



駐車場に入ってきた車が、ゆっくりと店の前を目指して走ってくる。



「とりあえず、品出しを済ませてしまおうか。お客さんも来そうだし」



と言って、海棠さんは手早く陳列棚に商品を並べ始めた。



彼だって気になっているのだろうけど、わざと気にならない風を装っているのか。それとも私に『気にするな』と態度で示しているつもりだろうか。



お客さんが居なくなって店内の商品整理を済ませても、彼女と河村さんは事務所から出てこない。二人だけになってから、もう三十分以上経っていると思う。



何か、あったんじゃないか。



できれば考えたくないようなことが、ふと頭に浮かんだから慌ててかき消した。
ところが消したはずの考えは、しつこいほど脳裏に浮かび上がってきて離れない。