海斗は心配そうに河村さんを見つめている。
「海斗、何があったの? 彼女は?」
耳元で問いかけると海斗は答えにくそうに顔を曇らせて、ひとつ息を吐いた。いかにも困惑した表情に、身構えずにはいられない。
「彼女、河村さんに話したいことがあるって。たぶん……」
海斗が答えている間に、河村さんは彼女を連れて事務所へと入っていく。
突然のことに焦って、二人の後を追おうとする私を海斗が引き止めた。くいっと腕を掴んで。
「海斗、どうして彼女を事務所に?」
「焦るな、アイツとは無関係だ、さっき河村さんに話があるって言っただろ?」
「本当に? でも……、どうして河村さんなの?」
海斗がまた息を吐く。
くしゃっと後頭部の短い髪を撫でつけて、困ったような表情。ちらりと横目で私を見て、口を尖らせる。話そうか話すまいか迷うような表情が不安と苛立ちを煽る。
「俺も彼女のことは知らないけどな、だけど心当たりはあるんだ」
「心当たり? 何? 海斗の知り合い?」
「違うよ、俺の憶測だと……彼女は、河村さんの旦那さんの……」
「え?」
そこまで言われて、ようやく悟った。
河村さんに会いに来たという彼女のこと。彼女が河村さんに話したいことまではわからないけれど。
私は、なんて鈍感なんだろう。
情けなくなって、ふうと息を吐く。

