風に煽られた長い髪を手で抑えながら、彼女は店内へと足を向ける。
ただ、店内に居る私たちの姿を捉えているような素振りは見られない。目に痛いほど眩しい陽射しが溢れた駐車場からは、店内を確認しにくいのだろう。
だけど彼女の顔の揺れ方や視線を泳がせる様子から、一応店内を気にしていることが見て取れる。
「海棠さんは?」
裏口へと振り向くのと同時に、海斗に問い掛けた。
海斗が私の傍にいるということは、もう配送箱を運ぶ作業は終わったに違いない。もし店の裏で配送箱の後片付けをしているとしたら、彼女が店の裏へ回りこんだとしたら、彼と鉢合わせになる可能性だってある。
「落ち着け、事務所で河村さんと伝票整理してる」
私の焦りを見透かしたように、海斗は落ち着き払った口調で答えてくれる。
そう言ってる間にも彼女は、店の入り口のドアの前に迫る。
「海斗、お願い、もし彼のこと聞かれても知らないって答えて……」
早々に事務所へと向かおうとする私を海斗が引き止めた。方向転換する寸前に私の腕を掴んで。
「大丈夫だから、ここで品出ししてるふりしろ」
海斗が言い終えるのと同時に、店の自動ドアが開く。店内へと一歩踏み入れた彼女が、ぐるりと店内を見渡した。
「いらっしゃいませ」
と言いながら、海斗は私の傍を離れていく。私は彼女を窺いながら、裏口のドアに近い陳列棚へと向かった。

