「なかなか戻ってこないから見に行ったんだ」
海棠さんは言ってくれた。私を探すつもりで階段を駆け上がったら、連絡通路に私と英司たちがいたのだと。
心配をかけてしまったことは申し訳ないけれど、嬉しいと思ってしまったのが本音。
「もし居なかったら、どうしてた?」
なんて、嫌な質問をしたのは困らせたいからじゃない。
「絶対に見つけに行く、そんなわかりきったこと聞くなよ」
とりあえず期待していた通りの答えを聞けたことに満足。
海棠さんはつんと口を尖らせて、ふてくされた表情をする。と思ったのは僅かな時間だけ、ゆるゆると解けていく表情から笑みがこぼれてきた。
つられて笑い出してしまう私を肘で突いて、海棠さんも笑う。
帰路へと向かう列車の中は静まり返っているというのに、私たちの周りだけが温かい。心地よさを感じながら列車に揺られて、どこまででも行けそうな気分になる。
行く時とは明らかに違う車内の空気と私たち。
さすがに車内で手を繋いだり、べたべたくっ付いたりはしない。
だけど、行く時よりも私たちの距離が縮まっているのは確か。
車内はさほど混んでいないのに座る位置が近くなって、行く時には触れなかった腕が当たり前のように触れ合って。恥ずかしいと思う気持ちはまだ捨て切れていないし、間近で顔を合わせて話すのは照れ臭い。
私たちは変わった。
いい方向に。
お互いに望んでいた方へと。

