「英司、幸せに!」
ぐらりと動き始める列車の窓に向かって呼びかけた。手を振りながら、自然と表情が緩む。
聴こえるはずなんかないのに英司が頷く。
『瑞香も……』
深く頷いた後、開いた口から私の名が溢れたような気がした。確信はないけれど、単なる自信過剰かもしれないけれど。
英司の隣で手を振る佐倉さんの穏やかな表情を見ていたら、間違いではないようにも思える。
列車が加速し始めて、二人が離れていく。
海棠さんが繋いでいる手を掲げた。
反対側の手は振ったまま、バンザイするような格好で私たちは二人に手を振り続ける。英司と佐倉さんの顔が見えなくなるまで、列車がホームから離れていくまで。
列車の気配の消えたホームに残った僅かな空虚感から逃れるように、海棠さんが息を吐いた。挙げた手を下ろして、ぎゅうっと握りしめる。
「瑞香、俺でもいいか?」
自信のなさそうな言葉に反して、彼の目は真剣で圧倒されてしまうほど。
「海棠さんがいないと、居てくれないと困るよ、私には海棠さんじゃないと……」
言い終える前に抱き締められて、言葉は彼の胸の中へと消えていく。ホームを駆け抜けていく風が、私たちを冷やかすようにくるくると髪をそよがせる。
「瑞香、幸せにするから……、俺がきっと、絶対に」
風に負けない力強い声。
ふわっと舞い踊る髪を海棠さんが撫でつけた。

