「瑞香、ありがとう」
英司がふわりと微笑んだ。
きっと私に話すべきか悩んでいただろうし、私の反応を恐れていたに違いない。だから私と会った時に、あんな硬い表情をしていたのだろう。
表情を緩ませる英司と佐倉さんの向こう側に、海棠さんの姿が映ってる。
ホームから駆け上がってきたのだろうか、僅かに肩を揺らしているように見える。ちくりと刺さるような視線に不安が混じっているのが感じられたから、『大丈夫』と手を振った。
海棠さんは安心したように目を細めて、小さく頷く。
私の視線を辿って、英司と佐倉さんが振り返る。同時に海棠さんは笑顔で会釈して、こちらへと歩いてくる。
すると英司は、私と海棠さんを交互に見て不思議そうな顔。何か言いたそうな口元を見たら、顔が緩んでしまって笑いそうになる。
「英司、紹介するね。こちらは海棠さん、道の駅で一緒に働いてるの」
「海棠です、はじめまして」
私が紹介すると、海棠さんはもう一度礼をして右手を差し出した。その手を握り締めて、英司がきゅっと口角を上げる。
「あなたが海棠さんですか、母さんから聞いてました」
「英司、おばちゃんから何か聞いてたの?」
問いかけると英司は得意げな表情。
隣で佐倉さんが小さく頷いてるということは、今日聞いてきたばかりなのかもしれない。

