聴かせて、天辺の青


ずっと一緒に居られますように。



もう一度願った。
走りながら海棠さんが振り向く。
ちょっと待って、私は急に止まれない。



急停止を試みたけれど間に合わず、足を止めて両手を広げた海棠さんの胸にダイブ。そのまま、海棠さんに抱かれてしまった。



海棠さんの胸から、ずいぶん速くなった鼓動が響いてくる。ずっと華奢だと思ってた海棠さんの腕の中は、意外と広くて収まりが良い。
少しでも早く息を整えたいのに深呼吸もできず、逆に乱れていくばかりで落ち着かなくなってくる。



ぎゅうっと腕に力を込めた海棠さんの息が髪を掠めた。私と同じくらい上がった息に、ほんのりと熱を帯びている。



「邪魔されたからやり直し、こうして独り占めしたい、瑞香を」



境内の隅の木陰、聴こえてくるのは微妙に乱れたお互いの鼓動と息づかい。名前なんか呼ばれてしまったから、さらに胸のざわめきが加速する。



「海棠さん……」



言いかけて顔を上げると、只ならぬ視線が私たちに注がれていることに気づいた。さっき拝殿の前で注意したおばあさんが、抱き合う私たちを凝視している。わざわざ足を止めて、正面から見る姿勢で。



見せ物じゃない!
と、言うより早くおばあさんがにんまりと笑った。



「お二人さん、お幸せにね」



海棠さんと私は、顔を見合わせて苦笑い。
おばあさんは笑顔のまま、そっと境内から出て行ってしまった。