聴かせて、天辺の青


赤い鳥居を潜り、拝殿で二人で手を合わせた。
先に顔を上げたのは私。隣りの海棠さんはまだ目を閉じて、神妙な顔で手を合わせてる。本当に息をしているのかと思うほど微動だにしない横顔。



何を祈ってるんだろう。
ぱっと目を開いて、海棠さんが顔を上げた。



「何を祈ってたの?」

「うん……秘密、言ったら叶わなくなりそうだから」



海棠さんにしては珍しい意地悪っぽい言い方で、くすっと笑う。



きっと以前なら『アンタには関係ない』って冷たく突き放してただろう。
そう思うとすごい進歩だ。こうして笑顔を見ていられることがとても貴重で、何よりもありがたく感じられる。
もちろん、彼と一緒に居られることも。



「いいよ、じゃあ叶ったら教えてね」

「どうしようかなあ……」

「あれ? 黙ってるつもり? もしかして宝クジ当たりますように……とか、そういうお願い?」

「さあ? 何だろうね」

「ズルいなあ、そういうのを独り占めするのは良くないんだよ? 知ってる?」



つい語気が強くなってしまう。
あまりにも勿体振るから、追及せずにはいられなくて。



それなのに海棠さんは、私をもて遊ぶような笑顔。ちらっと私を見て、緩やかに口角を上げる。



「じゃあ、独り占め、……してもいい?」



海棠さんが、ゆるりと目を細めた。
ぞわりと胸が揺らいで、体の重心が彼へと傾いていく。