聴かせて、天辺の青


終点はさすが主要駅。何本ものホームが並んでいて、改札口へと向かう人の流れに思わず足がすくみそうになる。



なんとか流れに乗りつつ、改札口への階段を上る私の手を彼がさりげなく握ってくれた。横目で窺うと、彼はまっすぐ前を見たまま。私だけが勝手に意識してしまっているのが恥ずかしくなって、すぐさま目を逸らした。



手を繋ぐぐらい大したことじゃない。
何てことないんだから、と心の中で呟いて。



改札口を出て駅構内の案内所で観光マップをもらったら、いよいよ街へと繰り出す。
マップを眺めていたら、彼の指が視界に飛び込んだ。



「ここ、行ってもいい?」



指し示したのは神社。掲載された大きな赤い鳥居の写真が目を引く。



「うん、ここなら歩いて行けるけどバスもあるみたい。バス停は……、あっち?」

「まさか、あのバス? ちょっと走るよ」



駅前のロータリーに停まったコミュニティバスを見つけて、海棠さんが走り出す。
置いて行かれそうになる私の手を引いて、振り返った海棠さんは笑顔で。私もつられて笑顔になっていた。