聴かせて、天辺の青


終点の隣町へは約一時間半の乗車。基本的に海沿いを走り、線路と並んだ国道と海の景色にはほとんど変化はない。
地元の見慣れた景色だからこそ落ち着けるし、彼と二人きりの緊張感に余計に構えなくても済んだ。



おばちゃんの家のこと、仕事のこと、たわいないことを話しながら列車はまっすぐに走り続ける。



「海棠さんの田舎もこんな感じ?」

「うん、よく似てる。だけど波がもっと穏やかだよ、ここみたいに、どこまでも流されそうじゃないけど」

「どこまでも……って」



思わず笑ってしまったけど、海棠さんの素直な気持ちかもしれない。
それとも彼の密かな願望だろうか。



「本当にそう思うんだよ」



私につられて彼も笑う。
どこまでも流されるなら私も一緒に流されてみようか。陸を離れて、どんどん沖へと流されて、行き着く先はどこなんだろう。




彼と確かめてみるのも悪くないと、今は思える。できるなら、そうしてみたい。
彼と確かめられるのなら。



線路と並走する国道を走る車の数や店舗数が増えて、市街地らしい景色へと変わってきたらへ到着は間もなく。