じっと見つめられた海斗は、いかにも照れ臭そうに表情を緩ませた。じんわりと頰に赤みが浮かび上がってきて、見ている私まで恥ずかしくなる。
すると海斗は私の視線に気づいて、顔を強張らせた。仕切り直すように咳払いをして
「河村さん、大丈夫ですよ。瑞香をこき使ったりしませんから」
と胸を張るから、思わず笑ってしまいそうになる。河村さんが目を細めて、安心したように頷いた。
二人とも、いい顔をしている。
思い合っているんだと一目でわかる穏やかな笑み。
「わかった、大事に扱ってよね」
「了解っ、わかってますよ」
再び海斗が手招きすると、河村さんがするりと手を離す。
「行ってきます」
「気をつけて、何かあったらすぐに戻ってきて、私に言ってね」
河村さんの笑顔は、何とも言えない無邪気さが滲んでいてかわいい。海斗は照れ臭そうな顔を隠すように素早く背を向けて、ドアへと向かってく。
その仕草が面白くて、笑いを堪えながら海斗の後を追いかける。
背中越しに、河村さんがくすっと笑うのが聴こえた。

