というわけで、私は事務所に連れ戻されてしまった。
事務所で伝票整理を手伝うことに。
私の代わりに河村さんが売り場に出たり戻ったり。みんなが慌ただしいのに私ひとりが何もせず、ぼーっとしているのも心苦しい。
だからと言って何かしようとすると、タイミング悪く河村さんに見つかって怒られてしまう。
何にもできないもどかしさに苛立ちながらも、開店後の混雑が落ち着いてきた。
ようやく事務所に戻ってきた河村さんが、ふうと息を吐いて席に着く。
「すみません、何にもお手伝いできなくて」
「何を言ってるの、瑞香ちゃんはここで、ちゃんと仕事してくれてるじゃない」
恐る恐る声をかけると河村さんの顔に、ふわっと笑みが溢れる。安堵感に満たされていく間も無く、売り場へ繋がるドアが開いた。
ひょこっと顔を覗かせたのは海斗。
「ああ、ここに居たんだ。瑞香、ちょっといい?」
と言って手招きする。
「うん、何?」
すぐについて行こうとする私を河村さんが引き止めた。ぐいと手を引いて。
「ちょっと待って、藤本くん、瑞香ちゃんに何の用? 私が行こうか?」
疑いに満ちた目で海斗を見ながら。

