このまま座っていたら根っこが生えてきそうなほど、私たちは寛いでしまっていた。
これから掃除をしたり、アルバイトにも行ったり、まだやるべきことはあるというのに。心地よい空気感に身を委ねてしまう。
「さて、そろそろ掃除してこようかな」
自分自身に言い聞かせるように語気に強さを込める。立ち上がろうとした手を掴んだのは海棠さん。
「俺がするから、ここに居て」
と言って、私を支えにして立ち上がる。早々に去ってしまおうとするから、とっさに彼の腕に縋った。
「待って、私がする。私の仕事だから」
「いいよ、ひとりで充分だから来なくていい」
彼はめんとくさそうに答えて、私の手を解こうとする。意地でも離すものかと、私は彼の腕を引っ張った。
「だから、私ひとりでいいでしょ」
すると、おばちゃんがくすりと笑う。
「ふたりで行ったら? 瑞香ちゃんは指導員として見てたらいいじゃない」
おばちゃんの隣で海斗がにやにやしてる。まるで小馬鹿にしたような笑顔で、
「それなら俺も手伝おうか?」
立ち上がろうとして腰を浮かせる。
「海斗は来なくていい」
言い放って、彼の腕を引っ張りながら立ち上がった。海斗より先に。

