和田さんたちが出勤して静かになった和室には、海斗と海棠さんと私。台所で食器を片付け終えて、おばちゃんがお茶を淹れてきてくれた。
「よく笑ったから怪我したところが痛いんじゃないの?」
「平気、笑ってるのか食べてるのかわからなかったよ」
おばちゃんが心配してくれてるのはわかるけど、笑いながら言うから私まで笑ってしまう。本当は笑うと胸に響いて痛むのだけど、そんなことはどうでもよくなっていた。
「どうするの? アルバイト行くの? もう少し休んだらいいのに……」
「だって、家でじっとしてるのは退屈だから。外に出てる方が私には合ってるの」
お茶を啜っていた海斗が、くすっと笑う。
「おばちゃん、もう瑞香には何を言っても無駄だよ、俺らの忠告なんて聞く耳持たないから放っておいた方がいいって」
「そりゃあね、私もわかってるけど……、でも心配なんだから言わないでいられないじゃない」
「おばちゃんは瑞香と言い合うの楽しんでるんだろ?」
「ん……、それもあるけどね、心配してるのが本心なのよ」
海棠さんは穏やかな顔をして、おばちゃんと海斗の会話に耳を傾けてる。時々私を見て微笑んでくれる顔に、ドキッとさせられてしまう。

