聴かせて、天辺の青


彼に優しい目で見つめられている、言いたいことも言えなくなってしまう。
それなのに海斗は気づいてないらしく、同じ調子で話し続ける。



「わかったわかった、でも、瑞香だって同じようなものだろ?」

「私も……かな?」

「ああ、でも瑞香は時々貝になるよな?」

「貝? 何それ?」

「黙り込んで、何にも言わなくなるってことだよ」

「そう?」



とぼけてみせたけど、心当たりがないわけじゃない。なんとなく自分でもわかってる。海斗に見透かされていることも。



昔から、そうだった。



ふと脳裏に浮かんだのは英司のこと。
昔へと手を伸ばそうとしてしまったから……、なんて後悔したけど遅かった。
昔の海斗を思い出そうとしたら、一緒に英司の姿が引きずられて浮かんでくる。



もうすぐ英司が帰ってくること、海斗は知ってるのかな。連絡は取ってないと言ってたから知らないのかもしれない。



言い出そうと迷っているうちに、海斗が口を開いた。



「瑞香、本気で明日から出社するのか?」

「うん、もちろん」

「だったら俺が迎えに行ってやるよ、自転車は危ないだろ」

「いいってば。心配無用だよ」



海斗と私の会話に飛び込むように、彼がひとつ咳をした。