海斗と私が彼を振り向いたのはほぼ同時。ようやく彼を置き去りにしていたことに気づいて。
彼は目を丸くして驚いた様子。海斗と私を交互に見てる。
「ほら、瑞香が言うこと聞かないから海棠に笑われただろ」
海斗が照れ笑い。グラスを口へと運びながら、そっぽを向いてしまう。
「どうして私のせいなのよ」
グラスへと手を伸ばしながら、さっき海斗が彼の名前を呼んだことを思い出した。
今まで海斗は、彼のことを何と呼んでただろう。名前を呼んだことがあったかな……、ちゃんと思い出せないけど嬉しい変化には違いない。
「二人は昔からそんな感じ？」
グラスを置いたのを見計らっていたように、彼が問いかける。そっぽを向いていた海斗が振り向いて、
「昔から……、だなあ？」
と私に同意を求める。
そんなこと問われると思ってもいなかったらしく、海斗はきょとんとした顔をして。やっぱり少し照れ臭そうに。
「うん、そうかも。海斗は結構誰とでもこんな感じだから、男女問わず……、ね？」
「なんか引っかかる言い方だよなあ」
「褒めてるのに、わからない？」
彼は黙って聞いてるだけ。
笑みを浮かべて私ばかり見てる。
