「あっ、シュークリーム! すごい久しぶりかも」
箱の中には隙間がなく、ぎっしりと並んだシュークリーム。広げた手のひらいっぱいに載せられるほど大きなシュークリームが箱にひしめき合う姿は圧巻。
このケーキ屋さんのシュークリームは昔からサイズが大きいことで有名だけど、こんな景色を見たのは何年ぶりのことか。胸がときめいて嬉しくて、手を出すことさえできない。
ただ見つめているだけで幸せ。
「瑞香、俺にもひとつ……」
視界を満たすシュークリームの中に、ごつごつとした手が飛び込んだ。満たされていた幸せを、ぷっつりと断ち切られてしまったような気分。
得意げな顔をして、海斗がシュークリームを持ち去っていく。大きな手に包み込まれたシュークリームは小さく見えるというよりも、連れ去られてしまうようで不憫に見えてしまう。
「ちょっと待ってよ、まずは見て楽しんでたのに……」
「俺には、見てないで早く食べてっていうシュークリームの声が聴こえたけど?」
わけのわからないことを言って海斗は大きな口でぱくりと、思いきり頬張ってしまった。口の両端にクリームをつけて、まるで子供。

