聴かせて、天辺の青


やわらかさも温もりも感じる間もなく、静かに唇が離れてく。
まだ胸の疼きは収まらない。



だって、まだ彼の顔は間近にある。彼は距離を保ったまま、私を見下ろして目を細めた。
何かの合図みたいに。



私も目を閉じて、小さい息を吸い込んだ。ほんの少しだけ、胸の疼きが収まったような気がする。



再び温もりが舞い降りてきた。



瞼に軽く触れて、頬へ。
感触を確かめるように、頬を滑りながら鼻先に。さらに鼻先から飛び立って、唇へと降りた。



微かに触れ合った瞬間、温もりが沁みてきた。
優しく輪郭をなぞりながら啄んでくれるたびに、胸の奥がくらりと揺らぐ。



彼が私の手を強く握り締めて、動きを止めた。強く押しつけた後、唇が離れて頬を伝いながら下りていく。



「よかった、無事でいてくれて……」



彼の口から漏れた掠れるような声。



前髪をかき上げた手が、頭を撫でるように包み込む。私の首元へと顔を埋めて、彼は息を吐いた。