「河村さん」
「瑞香ちゃん、もぉ……大丈夫?」
上がり調子な声で呼び掛けると、河村さんは勢いよくドアを開けて病室へと飛び込んできた。私に反する下向きな声を聴いて、改めて心配をかけてしまったことに気付かされる。
ベッドへと駆け寄ってくる河村さんの後ろには、ゆっくりとドアを閉める海棠さんの姿。
「今日はすみませんでした、御迷惑かけてしまって……」
「そんなこと全然気にしないで、瑞香ちゃんが無事だったのが一番なんだから」
河村さんの言葉が胸を熱くする。
海棠さんはベッドの枕元からテレビのリモコンを取り上げて、何にも言わずに音量を下げてしまう。そして河村さんの少し後ろから私を見て、小さく息を吐いた。
海棠さんは私に付き添って病院へ来た後、両親の到着を待ってからアルバイトに行ったらしい。河村さんはアルバイトを終えた海棠さんと一緒に来てくれたという。
アルバイト先では私が事故に遭ったことよりも、衝突した相手が強盗犯だったことと海棠さんのお手柄の方が話題になっているんだとか。
迷惑を掛けてしまったけど、笑い話で済ませてくれてる方が私にとってもありがたい。

