両親が帰った後、一人になった病室に響くのはテレビの音だけ。自然と音量が大きくなってしまうのは寂しいから。
淡々とニュースを読み上げるアナウンサーの声は面白くもなんともなくて、やっぱり寂しい。
母が枕元に置いてくれた携帯電話を手に取った。
電話もメールも着信はない。
時間を確認してみると、いつもならバイトを終えて帰る頃の時間。おばちゃんには母から連絡しておいてくれると言ってくれたけど、私からも連絡した方がいいかな。
考えていたら、ドアがこつんと鳴ったような気がした。テレビの音に紛れてしまって、はっきりと聴き取れなかったけど誰か来たのだろうか。
看護師さんなら、すぐにドアを開けてはいってくるはず。両親は帰ったばかりなのに……、と思いつつドアの方へ目を向けた。
ゆっくりと開いたドアの隙間から、警戒心いっぱいの目が覗いてる。
少しずつ開いていくドアの向こうに、見覚えのある顔が露わになってくる。
「こんにちは……」
遠慮がちな声が聴こえて、予想が確信へと変わった。

