「小花ちゃんはどうしたの? お昼寝?」
「違う、明日帰るって言ったら拗ねてるのよ、ほっといたらいいって」
「え? 明日帰っちゃうの? そんなに急に?」
さらっと紗弓ちゃんは言うけれど、いきなり明日なんて言われたらビックリするに決まってる。私だって今初めて聞いたから、相当驚いているんだから。
「うん、旦那が明日の夜帰るって急に連絡してきたのよ。本当は来週までの予定だったのに仕事が早く終わったんだって」
「小花ちゃん、久しぶりにパパに会えるのに嬉しくないの?」
「私の友達の子供と、今度の土曜日にデートの約束してたのよ」
「デート? ってことは男の子?」
「そう、同じ歳の子で妙に意気投合してデートするなんて勝手に決めてね。隣県の水族館に行くって言うのよ。自分達だけで行けないくせにね」
「かわいいね、デートなんて言葉、どこで覚えたんだろう」
「さあね、旦那も小花もややこしくて困るよ」
紗弓ちゃんは、ぷいと頬を膨らませた。
ずっと小花ちゃんは小さい子供のままだと思っていたのに、見えないところで確実に成長してる。

