聴かせて、天辺の青


玄関の扉へと手を伸ばした瞬間、和田さんたちとは違う声に呼び止められた。



「ちょっと、君らもこっちに来てくれる?」



野太くてよく通る声が、私たちを確実に引き止める。何事かと振り向いたら、和田さんたちの向こうにいたのは警官。



背筋を冷たい物が駆け抜けていく。
和田さんが何か言いたげな顔をして、私たちを見てる。



そっと横目で見た彼は、平然とした顔のまま前を見据えている。何にも臆する様子もない。



「ありがとう、君らはもういいよ」



和田さんたちは早々に追い返されて、家へと向かっていく。すれ違いざまに私たちを見て、口角を上げて頷いた。『大丈夫』と言うように。



私も心の中で呟く。
大丈夫……



緊張しながら話し始めたけど、型通りの職務質問。単に地域の巡回に来た近所の派出所の警官だ。和田さんの車の傍らには、白い単車が停まっている。



警官に問われることに、彼は何にも偽ることなく答える。すべて私に話してくれたことばかり。
さっき麻美に突っ込まれたことは除いて。