「ええねん、ようわかる。こんなとこ居ったら出会いはないわ、コイツはどうや?」
和田さんが大きく頷いて、腕を伸ばした。ぐいっと肩に手を回して、連れてきたのは有田さん。ズレた眼鏡を懸命に直したと思ったら、和田さんに引きずられてまたズレてしまう。
「ちょっと、和田さん……」
戸惑う有田さんの頭をくしゃくしゃ撫で回して、和田さんは麻美に満面の笑み。
「前にも会(お)うたことあるやろ?」
「あ……、はい」
麻美は自信なさげに首を傾げる。以前に会ったかとか、そんなことよりも和田さんに圧倒されている感じ。
「コイツ、ええ子やから考えといたって、ほな」
と言って、和田さんは有田さんを解放した。他人事みたいに笑いながら見ていた本郷さんと海棠さんの元に帰還した有田さんは、しきりに眼鏡を掛け直してる。
「何? 知り合いだったの?」
「知り合いじゃないけど……、ひと月ほど前、おじさんと眼鏡の人と、あの人の三人でここに来たから」
麻美の指す三人に海棠さんが含まれていないのは当然。
きっと以前来た時にも、何かしら麻美に絡んだに違いない。

