聴かせて、天辺の青


しばらくロビーで待たされて退屈してきた頃、和田さんたちが入ってきた。



彼は両脇を和田さんと本郷さんに挟まれて、もみくちゃな笑顔。陽気な二人に圧倒されている感じだけど、ちょっとだけ楽しそう。



「瑞香?」



広々としたロビーを横目に受付へ向かっていると、ふいに名前を呼ばれた。呼ばれたのは私なのに、五人全員で振り向いたから呼び掛けた本人は驚いて硬直している。



「麻美、久しぶり。どうしてここにいるの?」



私が名前を呼ぶと、麻美の強張っていた表情がふわっと緩んだ。



麻美は高校の時の同級生。高校卒業後は県内の大学へ進学して、地元に戻ってきて就職した。町内の運動公園の事務所で働いていたはずなのに。



「四月に異動になったのよ、ここに欠員が出たから」



と言って、麻美は口を尖らせる。不満いっぱいの顔をして。
どうやら異動は麻美の本意ではないらしい。



運動公園と温泉施設を経営する会社は同じだから、異動があってもおかしくはない。会社は他にもオートキャンプ場や遊具施設のある公園や、実は私がアルバイトしている道の駅も経営している。地域の活性化に貢献している企業というのが経営理念らしい。