お寿司屋さんのある海沿いの道路を逸れて、山へと向かう川沿いの道路を走り始める。前を走る和田さんたちの車を追いかけて。
海から離れていくにつれて密集していた民家が減って、視界に占める田畑の割合が増していく。
田畑と民家の混じり合う景色の中、運転席側の窓から川が見えている。
道路に沿って流れる川は幅が広く、穏やかな流れから川底が覗いて見えるほど浅い。両岸の傾斜が緩やかな土手には丈の短い草が生い茂っていて、切れ間から河原へと降りる階段が見えている。
「暑くなったら、ここで水遊びできる?」
ようやく海棠さんが口を開いた。
さっきからずっと私の方を見ているけど、何にも話さない。正確には私ではなく、私の座ってる運転席側の窓から外の景色を見ているのだけど。
昼食を終えてお腹いっぱいになったから、半分寝ているのかと思っていた。
現に私がそうだったから。
ハンドルを握っているのに危険極まりない。話しかけてくれた彼に感謝せねば。
「できるよ、近所の子供がよく遊んでる。ずっと浅いから危なくないし」
「ふうん、気持ちよさそう」
と、彼はぽつり。
もう間もなく夏が来る。
まだ彼は、ここに居るつもりなんだろうか。

