海棠さんまでテーブルに肘をついて、身を乗り出して聞く気満々。
「え? 何? 和田さんも……ってどういうこと?」
「あんなあ……」
「もうええって、ホンマ止めとこ!」
話し出そうとする本郷さんの前で、手を振ってる和田さんがちょっと可愛い。
「和田さん、もういいって。ここまで聞いて引き返せないよ」
「ほら、瑞香ちゃんも知りたいって。もう教えたったらええやん」
本郷さんが宥めると、和田さんはふいっと唇を尖らせた。
「和田さんの奥さんも事務員さんやったんやで」
にやにやして本郷さんが話し出す。隣りでは有田さんが和田さんの顔色を窺ってる。
「そうだったの? 全然知らなかったけど」
「そりゃあ話したことないんやから……、そんなこと知らんでええやろ」
今まで定検のたびにおばちゃんの家で顔を合わせていたけど、和田さんの奥さんのことなんて初めて聞いた。
ということは……
「奥さんは、この辺りの出身?」
と尋ねたら、和田さんはふんふんと頷いた。口を尖らせて誰とも目を合わせないのは照れくさいから。
だけど、みんなはまだ和田さんの話の続きを待ってる。
「ああ、もう……、俺のことはもうええって、それより気になっててん」

