しばらく車で待っていたけど、彼はなかなか戻って来ない。
ちょっとだけ待ってって言ってたのに、すぐに行くからと言ってたのに。
ちらほらと不安な気持ちが顔を覗かせ始める。
もしかして、このまま戻って来ないんじゃないだろうか。
遠ざかっていく彼の背中が脳裏に蘇る。
慌てて車を降りた。
もう一度戻ろう、彼を探しに行こう。
駆け出したのと同時に、衣料品店の建物の向こうに現れた人影。高く掲げた手を振って、こちらに向かって駆けてくる。
「遅くなってごめん」
私に向かって駆けてくるのは海棠さん。
見た瞬間に不安なんて吹き飛んでしまったのに、一度駆け出してしまった足が止まらない。
彼が不思議そうな顔に変わってく。
私だって、どうしたらいいのかわからない。
危うく彼とぶつかりそうになって、ようやく止まった。
「どうしたの?」
「ううん、何でもないの。ちょっと迎えに行こうと……」
言いかけたけど、ちょっとおかしい。
迎えに……だなんて言ってしまったら、変に誤解されてしまうかもしれない。
それだけは避けたい。

