この曲が流行っていた頃、彼らのファンクラブに入ろうかと本気で悩んでいた。今思うと、とてもミーハーで恥ずかしい話だけど。
CDを手に持ったまま思い出に浸り、にやにやする私を見て彼は明らかに戸惑っている。ちょっと眉をしかめて、怒っているように見えないこともない。
「このCDなら、私持ってるから貸そうか?」
問い掛けると、彼の表情から戸惑いが消えた。残ったのは眉をしかめた怒りの表情。
「要らない」
きっぱり言って、CDの隣りに並べてあるDVDへと目を逸らす。
もうちょっと違う反応してくれてもいいのに。
「そっか……、この歌知らない? 私が高校の頃によく聴いたんだけど」
「知らない」
彼は振り向きもしないで、あっさりと返す。全然興味なんて無さそう。
「ふぅん、結構流行ってたんだよ? 私好きだったんだけどなあ……」
「この歌、好きだったの?」
彼がきっと振り向く。
返事を求めているわけでもなかったのに、そんなに機敏に反応しなくても……
だけど彼の表情から怒りの色が、ほんの少し消えていることに安心。

