そうか、これだったんだ。
さっき彼が何か言いたそうな顔をしていたのは、フリーマーケットのことだったんだ。
前に彼と衣料品店に行った時に、彼がもらったチラシ。駐車場でフリーマーケットがあると書いてあって、行ってみたいと彼が言ってた。
彼が覚えていたことが意外で、返事をするのを忘れてしまいそうになる。思い出させてくれたのは、おばちゃん。
「フリーマーケット? 行っておいでよ、和田さんたちとはお寿司屋さんで待ち合わせたら?」
「うん、そうするよ」
と言いながら、段取りを考える。
今から掃除を済ませて、昼食までにフリーマーケットに行くとしたら出発は何時だろう。
まずは和田さんに話して、待ち合わせの時間を聞いておかなくては。
「ありがとうございます、行ったことないから行ってみたかったんです」
彼の声が、僅かに弾んでるように聴こえた。そんなに行きたかったんだろうか。ちゃんと覚えていたぐらいだし。
「ゆっくりしておいで、掃除はしておくから気にしないでいいからね」
「いいよ、掃除ぐらいできるから」
慌てて口を挟んでしまった。彼がおばちゃんの好意に甘えて、『はい』と答えてしまう前に。
すると彼は、
「僕も掃除はするつもりだよ、それが僕の仕事なんだから」
と、はっきりした口調で答えた。
噤んだ口元に笑みを浮かべて。

