聴かせて、天辺の青


しんとした和室に響いてくる車のエンジン音。乾いた土と砂利を引っ掛けながら滑るタイヤの音が止まった。
それからすぐに、車のドアが開く音。



「小花!待ちなさい、ドア開けっ放し!」



と叫ぶ紗弓ちゃんの声。逃げるように、玄関に駆け込んでくる忙しない足音。玄関へと振り返ると、小花ちゃんが満面の笑みを見せてくれた。



「ただいま!」
「おかえり、どこに行ってたの?」
「ママのお友達たちとカラオケ、おみやげ買ってきたよ」



小花ちゃんは提げていた紙袋を両手で持ち替えて、ぶんぶんと体を横に振りながら嬉しそう。あれは隣町の和菓子屋さんの紙袋だ。



「もう、小花!車のドア、勝手に開けちゃダメって言ってるでしょ!それに走らないで!」



追いかけてくる紗弓ちゃんの声から逃げるように和室に飛び込んだ小花ちゃんは、あっという間におばちゃんの横に座って。紗弓ちゃんが睨むと、怯える仕草でおばちゃんに体を寄せた。