やっぱり、彼の知り合い?
と思いながら見ていると、彼が足を止めて振り返る。
強張った顔に鋭い目つき、歯を食いしばった彼は怒っているようにしか見えない。相当驚いたのか、彼女たちは怯んだように立ち止まった。
あんな表情をした彼は、ここに来てから見たことがない。
不安な気持ちで見守っていると、彼女たちは顔を見合わせた。彼の苛立ちを察しているに違いないのに、彼女たちの横顔には薄っすらと笑みが浮かんでるようにも見える。
何かを決めたのか、小さく頷き合ってから一人が彼を見据えた。
ここからでは声は聴こえない。彼女たちの背中しか見えないけれど、彼に何かを問いかけているようだ。首を傾けて彼を見つめる彼女の体が、少しずつ前のめりになってく。
彼女たちの必死な様子が見て取れるというのに、彼の表情は反対にますます冷めていくのがわかる。
いけない、と思った。
でも、ここにいる私に引き止めることはできなくて。
祈るしかなかった。
触れてはいけないものに触れた彼女たちが、一刻も早く去ってくれることを。

