聴かせて、天辺の青



品物を物色するよりもレジに並んだお客さんの方が増えてきた頃、彼が私の隣りに立った。



「こっち手伝うから」



と言って、袋詰めを手伝い始める。私にありがとうを言わせる間も無く、品出しの時のように黙々と手際よく。



安心したようにお客さんが話しかけると、彼は手を止めることなく笑顔で返してる。笑ってる彼には余裕が感じられた。



彼は仕事に慣れてきたし、ここにも慣れてきたんだ。
そう思うと安心できて、忙しさに追われる私の気持ちにも余裕が生まれてくる。



「今朝はどうした? トラブル発生か?」



よく見知ったおじさんが、やさしい声を掛けてくれた。今日使う分だけの野菜を買うことにしているのだと、話してくれたことがある。



「はい、お待たせして申し訳ありませんでした」



私が答えるより早く、彼が答える。野菜を詰めた袋を、おじさんに手渡しながら。



「君も慣れてきたなあ、顔が柔らかくなって、いい感じになってきた。頑張ってよ」



おじさんは豪快に笑って袋を受け取ると、ぽんっと彼の肩を叩いた。彼は口を結んで頷いて、



「ありがとうございます」



と、笑顔で返した。