聴かせて、天辺の青



「河村さんを家に送った後、ひとりで車流しに行った時に若い奴らが絡んできたんだ」

「もしかして西戸峠? まだ行ってるの?」


海斗は高校を卒業してすぐに免許を取って車に乗り始めて、西戸峠を走り込んでいる。西戸峠を走らせたら、この辺りでは海斗に勝てる人なんていない。


「そう、たまに行きたくなるんだ、最近の若い奴はマナーが悪過ぎる。挑んできたから相手にしてやったのに、負けたからってすぐにキレる。相手をしてくれてありがとうっていう感謝の気持ちがないから困る」


と言って、海斗はもう一度大きく息を吐いた。


てっきり河村さんの旦那さんに殴られて、修羅場になったんだと思いこんでいたから少し拍子抜け。


でも、そんなことでよかった。
車が好きな海斗にとっては、いいストレス発散方法になっているんだろう。


「なんだ、若い子にヤられたの? 海斗が喧嘩して傷作ってくるなんて珍しいから、河村さんと何かあったのかと思ってたよ」

「おい、待て。ヤられたんじゃない。俺が礼儀を教えてやったんだ。俺が負けるわけないだろ?」


ムキになるところが可笑しくて、笑ってしまいそうになる。