そして確かに感じられるのは、海斗の河村さんへの揺るがない気持ち。
海斗が幼馴染みだから信じたい、庇いたいという私の希望だけじゃない。
本気で河村さんを思うのなら幸せな家庭を壊すようなことは、海斗は絶対にしないと思う。すべてを壊してでも河村さんを手に入れるようなことを、海斗がするわけない。
だけど……
「じゃあ、その口元の傷はなに? 河村さんの旦那さんと喧嘩になって、殴られたんじゃないの?」
思いきって聞いてみる。
すると海斗が、大きく息を吐く。
「瑞香、お前の妄想力は大したもんだなぁ……本気でそんなこと思ってたの?」
呆れた顔で車を停めたと思ったら、信号は赤。ハンドルにもたれ掛かって、ちらりと横目で私を見た。
「違うの? 昨日仕事終わってから河村さんと出かけてたんでしょう?」
「やっぱり見られてたんだ、昨日おばちゃんの家からの帰り、交差点で信号待ちしてただろ? 俺も気付いてたんだ、だからブレーキ光らせたろ?」
さっきまでの真剣な表情が解れて、緩んだ顔に笑みが浮かんでいる。
「知ってる、海斗も気付いたと思ってた。だから今日聞こうと思ってたんだ。で、旦那さんに殴られたんじゃないとしたら、その傷はどうしたの?」
海斗がにやっと笑った。

