聴かせて、天辺の青



一昨日、ここで会った時には怪我なんてしてなかった。だとしたら昨日、何かあったんだ。


でも、海斗は喧嘩なんてしない。


血の気は多いけど、かっとして誰かに喧嘩を売ったりしないし、喧嘩を売られてもまともに相手することはない。それに体格がいいから、一方的に負けるようなことはない。


それなのに何故?
疑問ばかりが湧き上がる。


「ちょっとって何? どうしたの? 誰かに殴られたの? もしかして絡まれたとか? 昨日何かあったの?」


口に出してから気づいた。


昨日、海斗が河村さんと一緒にいたことを。たぶん仕事帰り、海斗の車で出掛ける二人の姿。


河村さんとのこと、怪我のこと、どう尋ねたらいいのかと口を噤んでしまったところに彼が割って入る。


「藤本さん、仕事中に何かあったんですか? 変な客に絡まれたりしたとか……」

「いや、違う。仕事終わってからだよ」

「仕事の帰りに、どこか出掛けてたんですか?」


彼の質問に嫌気をさしたのか、海斗が振り向いた。きっと彼を睨んで、それ以上聞くなと。


「どうでもいいだろ、関係ないし」


低い声で釘を刺す。