翌朝、いつもより少し早めにおばちゃんの家を出たら彼が居た。
これからバイトへ出発するという時、いつもより三十分ほど時間は早い。
自転車の傍に立って玄関を見据えていた彼は、私を見つけた彼が口角を上げる。いかにも待ち構えていたというように。
何を企んでいるのか、私が問い掛けようとするよりも彼の口が開く方がが早かった。
「一緒に行こう」
彼の口から出てきた言葉に、驚かずにはいられない。
いつも彼は先に出勤しているし、退社も別々だというのに。今日に限って待っているなんてどういうことだろう。
「どうしたの? 寄り道でもするの?」
「いや、アンタを待ってた。久しぶりに一緒に行こうかと思って」
私に見せる笑顔は変わらない。恥じらうような様子もなく、寧ろ清々しい笑顔。
一体どういうつもりなのか、ますます分からない。
昨日私が話したから、気にしてくれてるの? なんて思ってしまうのは、私の自惚れかもしれない。

