聴かせて、天辺の青



夕食の準備を手伝い終えて、おばちゃんの家からの帰り道。


既に辺りは暗く、県道の街灯が明るさを増し始めている。県道を渡る交差点で信号待ちをしていると、聞き覚えのある車の排気音が近付いてくる。


とくにスピードを出している訳でもないのに、お腹に響いてくるような重低音。ゆっくりと流れていく車の列へと目を向けると、車高の低い黒色のクーペがやって来るのが見えた。


間違いない、海斗の車だ。


運転席の海斗の姿を確認する前に、助手席に誰かが乗っているのがわかった。


もしや……
予感は当たった。


河村さんだ。


海斗の車が目の前を通り過ぎていく瞬間、助手席の河村さんが窓の外へと振り返る。


私の方へと。


目が合った。


と思った時には、既に車は通り過ぎていた。海斗の車が遠ざかっていく。


一瞬だけ、ブレーキランプが光ったように見えたのは気のせいじゃない。


きっと、海斗も私に気づいたんだ。


おそらく二人は仕事の帰りだろう。


だけど、海斗も河村さんも家は逆の方向。これから二人で食事にでも行くのかもしれない。


脳裏に浮かんだのは、以前スーパーで会った河村さんの旦那さん。優しそうに娘さんに向けられた目が印象的だった。


海斗だって、わかっているはずなのに。


やっぱり海斗に聞かなくちゃいけない。