彼を玄関に待たせて台所を覗くと、おばちゃんは台所で後片付けをしている最中だった。テーブルの上には焼き鮭と玉子焼きの盛られたお皿、きっと紗弓ちゃんたちの朝ごはんだ。
「おばちゃん、行ってくるね。買い物はある?」
「うん、今日は買い物は紗弓に行ってもらうから、二人でゆっくりしておいでよ。悪いけど、帰りにガソリンだけ入れてきてね」
「了解、ガソリンね」
「悪いね、瑞香ちゃんは早起きして一仕事終えたのに、紗弓はほんとに堕落してるわ。昨日は手伝うって調子いいこと言ってたのに、まだ寝てるんだから」
おばちゃんが不満そうに口を尖らせる。
「紗弓ちゃん、久しぶりに帰ってきたから安心したんだよ」
おばちゃんを逆撫でしないように返した。
紗弓ちゃんの気持ちは、私にも多少わかる。私が仕事を辞めて家に帰ってきた時が、そんな感じだったから。ほっとしてしまって、ごろごろとしてしまう日が続いていた。その頃の私に対して、母もおばちゃんみたいなことを言ってたかも。
「まあね……小花ちゃんが小学校に上がったら、そんなに頻繁には帰って来れないだろうけどね」
寂しそうに零したおばちゃんが気になって、おばちゃんが『二人でゆっくりしておいで』と言ったのを、すっかり聞き漏らして出てしまった。

