「深くは聞かないけどね、何か抱えてるんじゃないかって私に言ったことがあるの、だから気晴らしになると思って誘ったんじゃないかな」
おばちゃんは、しんみりとした表情で目を細めた。
いつもはちょっとふざけてる感じの和田さんだけど、結構細かいところに気がついたりする。和田さんなりに、彼に対して何かを感じ取っているのかもしれない。少し聞いてみたい気もする。
「和田さん、さすがだね。彼には和田さんから話してくれてるのかな?」
と尋ねたら、おばちゃんがはっとして顔を上げた。おばちゃんの視線の先、ギシッと床の軋む音がした方を振り返る。
廊下から遠慮がちにこちらを覗いたのは彼だった。いつの間に階段を下りてきたんだろう。
「おはようございます」
ぼそっとした声はいつもと変わらない。
「おはよう、ご飯にする? 昨日遅かったから、もっと寝てたらいいのに……ご飯食べたら寝てなさいな」
「あ、私食べ終わったから用意するよ、おばちゃんは食べてて」
立ち上がろうとするおばちゃんを咄嗟に引き止めた。何となく彼と二人になるのが嫌だったから。
「そう? じゃあお願い、ほら海棠さん座って」
おばちゃんはきょとんとしながらも返して、彼に手招きした。

