和田さんたちを送り出した後、朝食を頂いてるとおばちゃんが顔を上げた。少し首を傾けて、何か言いたげな目と目が合うのを合図に口を開く。
「瑞香ちゃんも温泉行くの?」
おばちゃんは行くつもりなんだ。だったら私も行かなきゃ……おばちゃんひとりで行くことになるのも申し訳ないし。
「行くよ、温泉なんて久しぶりだし……」
「本当は行きたく無いんでしょ? 瑞香ちゃん、長風呂が苦手だから」
くすっと笑ったおばちゃんは、私がお風呂が苦手なことを知っている。あの湯気の立ち込めた空間に居ると、圧迫感と息苦しさに攻められてるみたいで長居なんて無理。
「おばちゃんは行くんでしょう?」
「うん、せっかく誘ってくれてるし……和田さんね、彼のこと気にしてくれてるのよ」
「え? そうなの?」
聞き返さずにはいられなかった。
和田さんから彼のことは何にも聞かれたりしないし、バイトを始めてからは和田さんと顔を合わすことも滅多にないのに。

