本郷さんと有田さんも下りてきて、三人が食事を始める。少し落ち着いて台所から和室のテレビを観ていると、和田さんがひょっこり首を伸ばした。
「なあ、今度の土日、瑞香ちゃんと彼はバイト休みか?」
「うん、土曜日が休みだけど? どうしたの?」
「ほな、一緒に温泉行かへんか? 彼も一緒に」
ここから山側に1キロほどの場所に町営の温泉施設がある。昨日花見をした場所のすぐ近くだ。小さいけど、休日には町の人たちの憩いの場所になっている。
だけど、和田さんたちと温泉に行っても私だけ女だから気を遣わせてしまうだろう。それに温泉はあまり好きじゃないし。
「温泉って、シーショア白瀬の湯でしょ? 私はいいよ、女ひとりだし、彼だけ連れてってあげたら?」
「何言うてんねん、おばちゃんも行くやんな?」
あたかも行くと決めつけた言い方だけど、おばちゃんは今聞いたばかりらしい。急に話を振られたおばちゃんは、目を丸くさせた。
「え? 私も?」
「そうや、たまにはおばちゃんも外に出て行かなあかんって、な、決まりな、ごちそうさん」
おばちゃんに反論する余地を与えず、さっさと食べ終えた和田さんは部屋を出て行った。

