私は、大きく息を吸い込んだ。
「勘違いしてるみたいだから言っておくけど、私は突き落としたんじゃないからね、あなたがあまりにも危なっかしかったから、助けようとしたんだからね」
一息で言い終えて、彼を見据える。
だけど、彼は顔色ひとつ変えずに澄ましてる。まるで、余裕だと言わんばかりに。
そんな彼の唇が震えた。
何か言いたげに。
反論するならしてみなさいよ。
受けて立ってやるんだから。
と、答えを待つ。
もし誤解だとしても、少しぐらい謝ってくれるかもしれないと期待を込めて。
またひとつ、彼が咳をした。
「誰が助けてくれなんて言った?俺は何にも言ってない、ただ海を見てただけなのに、いきなり後ろから突き落とされたんだ」
やっぱり負けてない。私よりも早口で流暢に、ガツンと打つような強い口調。
「助けてと言ってなくても、飛び込もうとしてたでしょう? あんな所で飛び込まれたら迷惑だから止めたの、わからない?」
「はあ? 誰が飛び込もうとしてた? 勘違いしてるのはアンタだろ? 自分の失敗を棚に上げて、何言ってんだよ、謝るのはアンタだろ?」
「何なの? じゃあ、どうして海なんて見てたの? あんな時間におかしいでしょう?」
もう、イライラの限界。

