聴かせて、天辺の青



だけど私には、彼の気持ちも両親の気持ちも少しだけ分かる。どちらかというと、残された両親の気持ちの方がよくわかつてしまう。


だって、私もずっと待っていたから。英司が帰ってきてくれるのを信じて、待っていたから。


「上京してから、田舎には帰ってないの?」

「もう十年ぐらい帰ってない……親は反対してたから帰れなかった、それに認めてもらえるまで帰らないつもりだったから」


おそらく親に認めてもらうことを指しているのだろう。上京して目標を達成し、故郷に錦を飾ることを夢見ていたに違いない。


「何か目標があったの?」

「ああ、上京してすぐに一度だけ成功したと思ったけど夢だった。ビギナーズラックだろうな……掴んだと思ったら、あっという間にすり抜けていったよ」


ふっと笑った横顔には、夢を掴み損ねた悔しさと自分に対する失望が滲んでいる。


帰るきっかけを失くしたから、ここに来たんだとしても、いずれは帰るべきだと思う。ここは、ただの通過点なのだから。


「帰りにくいのはわかるけど、まずは田舎に帰った方がいいんじゃない?」


きっと待ってくれてる人がいるのだから……と付け加えようとして、口を噤んだ。彼に問い掛けていると、私まで苦しくて。これ以上言えなくなってくる。