「詩織がいつもお世話になっています」
旦那さんは、柔らかで心地よい声とともに微笑んだ。たとえるなら丸い角をした四角。真ん丸でもないし、尖った角なんて持ってなさそうな。
河村さんをすっぽりと包み込むような、優しさに満ちていると思った。
そういえば、旦那さんは隣県に単身赴任で働いているんじゃなかったかな? だから河村さんは実家で両親と暮らしていると、以前話してくれたはず。
「旦那さんも今日はお休みですか?」
「ええ、仕事が落ち着いてるから、今日は休暇を取って帰ってきてくれたの、週末だしね」
河村さんが、旦那さんをちらりと見上げた。旦那さんが目を細めて頷く。
そうか、今日は金曜日。
旦那さんは、日曜日までここに居るつもりなんだろう。
「河村さん、土日は出勤予定ですよね? せっかく旦那さんが帰ってこられてるから、休んだらいいのに……」
尋ねると、河村さんはきゅっと口角を上げた。
「うん、それは無理。 いいのよ、子供と二人で遊んでくれてると思うから」
さらっと答えた河村さんを見つめる子供の顔は、少し寂しそうに思えた。

